トリプルデュエリスト!

※今回は完全に雑談回ですのでご了承ください。

少し前に『ゴーイングマイゥェイ』の管理人ロククが描いてくれたもの。
左から順に、私、ロクク、PINで描いてくれました。
スゲー!てか、私のイラスト格好良すぎるだろ!ありがとう!

トリプル

これ以下は、ロククが「この三人の遊戯王の物語考えたら面白そうだな…」と言っていたのでイラストのお礼に、稚拙な文章ながらに私が考えて書いてみたストーリーとなります。


※もう一度言いますが、今回は完全に雑談回ですのでご了承ください。


―――――――――――
――――――――
―――――


 外は、まるで時が止まったかのような夜だった。人の気配も無く、市街地であろうこの場所には一つとして人工の灯りは存在していない。ただ、空に漂う満月だけが明るく足場を照らす。音は、風に交じって彼の足音が淡々と響くのみである。
 短い髪が風で揺れる。少し身震いすると、寒さに耐えかねてフードをかぶり黒縁眼鏡を直すと再び歩き出した。右肩にかけたバックパックが重そうに揺れる。
 商店街のような所を歩いているのだろう。もはや廃墟と化したゲームセンターや、沈黙した自動販売機が形をかろうじて保ったまま沈黙していた。仕事を出来なくなった電灯の何本かは地に伏せ、その周りには瓦礫が転がる。かつて建物があったのであろう四角い空き地には鉄くずの山が積まれ、見上げると高層ビルは漆黒のモノリスのようであった。
 ふと、見慣れた姿を見たような気がして足を止める。振り返ると、通り過ぎた建物のシャッターに何かが書いてあった。引き返して確認すると、そこには一匹の白い竜がスプレー缶で描かれていた。
 「かつては、ここも…」
 白い息が溶けるように消えて行く。冷えた外気が閉じた口の中に入り、気温の低さを実感する。両手を薄手のパーカーのポケットに入れ、親指を包むようにして握りこむ。冷たくなった指先が体温を取り戻すのを感じると、再び歩き出す。
 ふと、首元を冷たい風に吹かれて目を向ける。どうやら路地裏の方から吹いてきているようだ。真っ暗な道の先からは、低く唸る風が絶えず吹き続けていた。
 歩みは自然と路地裏へ向いた。狭い路地なので月の光は無く、暗さに慣れた瞳を頼りに、一歩一歩ゆっくりと進む。
 側壁に、随分と古い矢印の張り紙がバラバラな方向を指して何枚も張ってあったが、これの方向は無視して奥へと進む。右へ左へと、張り紙のある方へ進んでいく。
足元に気をつけながら、狭い路地をようやく抜けると広い空き地に出た。四方を建物に囲まれてはいたが、頭上からは月の光が十分に照らしていた。空き地の奥には柵があり、その向こうに潰れかけの工場のような建物があった。
 「ここは…」
 柵はすでに壊れ、柵の中心部に位置する扉を通らずとも中には入れるようになってしまっていた。かろうじて柵の役割を果たしそうに立てられている板でさえ、少し力を入れれば片手でも壊せそうなほどだ。その柵に触れないように通り、建物にたどり着く。近くで講堂を見上げると荒れようは凄まじかった。扉はあるべき場所に無く、中は吹きぬけとなっている。
 中へ入っていくと、トタン屋根の隙間から差し込む光がスポットライトのように建物内を照らしている。足元にはいくつかの雑草が生え、そこら中に瓦礫が散らばっていた。
 「フン、酷い有様だな」
 建物内の中心部には何か巨大な物に布がかぶせてあり、その姿を隠していた。高さはそれほどでもないがとても広い幅があり、建物内の六割以上をそれが埋めている。その正体不明の物に近づくと、ふと気付く。
 「まさか、これは」
 巨大な布を右手で力いっぱい引くと、布の上に溜まっていた大量の埃が霧散する。大量の埃に目を細めながらも力は緩めずに布を引き続ける。頃合いを見計らって布の離し、走り寄る。布が捲れたのはほんの三割程度だったが、それが何かを確認するには十分だった。
 「旧式の、デュエルフィールド!?」
 色は褪せ、錆び付いていてはいたが、それと判るだけの面影は残っていた。現代ではその存在を見た事のある者がどれだけいるだろうかと言われるほど、前時代の物だ。
 「…こんなものが、何故ここに」
 やはり目にするのは初めてで、驚きを隠せない。
 「来たか、『星屑使い』」
 奥から人の声が聞こえた。素早く声の方を向くと、何か小さいものが投げられていた。確認と同時に反射神経で後に飛ぶと、足元に飛苦無が突き立った。
 「誰だ!」
 声を張り上げて聞き返すと、旧式のデュエルフィールドの向こう側から人影が歩いてくる。月明かりの下にまで歩いて来ると、そいつの顔がはっきりと確認出来た。
 「…『奇術師』か」
 奇術師と呼ばれた男が月光の下で不敵に笑う。決して長くはない彼の赤い髪が風で少し揺れた。
 「貴様、何のつもりだ?」
 星屑使いの問いに、奇術師は答えず背を向ける。
 「待て!」
 叫び声を合図にしたようにして奇術師は超人的な脚力で、天井を支えている鉄骨に飛び乗る。
 「デュエルだ、星屑使い」
 「何だと?」
 いきなりの誘いに戸惑う。デュエルの誘いとあらば断るわけにはいかないが、今はそれ以上に重要な要件があった。
 「俺は、ロククに呼ばれて来たんだ。貴様の相手をしている暇は無い」
 「知ってるさ」
 「…どういうことだ」
 ここに来ることはロククと二人しか知らないはずだ。
 「デュエルをすれば判るさ」
 星屑使いを見下ろす奇術師の目には得体のしれない思惑が見受けられた。
 「…いいだろう、前回と同じく葬り去ってくれるわ!」
 思惑が何かは判らないが、デュエルの中で言葉を交わせば、何か情報を引き出せるかもしれない。どうせロククもまだ見つかってはいないのだ。
 バックパックを足元に下ろして中から一枚の板を取り出す。四角形とも平行四辺形とも言えぬ形のデュエルディスクを左腕に噛ませて固定する。ディスクからデッキを外し、手慣れた手つきで切っていく。
 奇術師も同じようにし、いつの間にか装着したディスクにデッキを固定する。スイッチを入れるとコンピュータの鈍い起動音とライフポイントを表示しディスクが『準備完了』を示す軽い電子音が順番に鳴る。
 「オーケー!さあ、デュエルだ!」
 わざわざ気分を逆撫でするような言い方で奇術師が申し込みの宣言をした。
 「デュエル!!先行は譲る、貴様のターンだ」
 星屑使いが受け、指を指すと奇術師は再び背を向けて飛び上がった。
 「何をしている!?…仕掛けておいて逃げるのか?」
 奇術師はトタン屋根に空いた穴を通って屋根の上へと飛び乗ると、満月を背にして星屑使いに視線で合図を送る。
 『ついて来い』と。
 「何のつもりだ!」
 「ドロー、オレは手札から《悪シノビ》を召喚。カードを二枚伏せてターンエンド」
 頭から爪先まで黒一色の忍者の姿をしたモンスターが奇術師の隣に出現し、続けて二枚の巨大なカードが足下に出現する。しかし実際に現れている訳では無く、デュエルディスクがカードを読み取り、発せられる光によって実際に現れたかの用に周囲の人間に見える仕組みだ。
 奇術師はまるで聞こえて無いかのように速やかにターンをプレイし終了すると、走り去ってしまった。その動きに合わせて彼の場のカードやモンスターも彼を追う。
 「…面白い」
 バックパックをそこに置いたまま走り、入って来た場所から外に出る。見上げると、トタン屋根から隣の建物に飛び移った奇術師の姿があった。
 広場へ出ると端まで走り、コンクリートで作られた建物の側面にかけ寄る。外壁に設置された鉄製の梯子を見つけると力いっぱい飛び上がる。元々高い所に梯子があることもあり、右手が下から二番目の鉄棒しか掴めない。少し高い位置で足が宙に揺れる。すぐに左手を一つ上にかけると次は右足を一番下にかけ、その後は順序道理に素早く駆け昇る。
 建物の屋上から見ると奇術師がゆっくりと遠くへ歩いて行くのを見つけた。追うようにして建物から隣の建物へと飛び移る。
 「この俺のターンを無視して去って行ったんだ、文句は言わせん。…ドロー!」
 少し高い建物から低い建物へ飛び移る。少し躊躇った後、約五メートルの高さを飛び降りて衝撃を吸収するように十分に膝を折る。さらに右手を付き、左手のディスクとカードが地に激突しないように気を使う。
 「手札からマジック、《サイクロン》発動!そしてフィールド魔法、《竜の渓谷》発動、手札の《ドラグニティ‐ファランクス》を捨て、《ドラグニティ‐ドゥクス》を手札に呼ぶ。そして召喚!」
 体制を立て直し、再び走り出す。遠くで歩いている奇術師の背が少しづつ近づく。止まってターンを行うのでは追い付けないと感じ、余裕を見て走りながらにターンを進める。
 《サイクロン》の効果で奇術師の足下の伏せカードが砕けると、急に立ち止まりこちらを向いた。
 「やっと来たか」
 怪しげな紅の瞳が月夜に煌めく。
 「《ドラグニティ‐ドゥクス》召喚時効果で《ドラグニティ‐ファランクス》を装備!そして《ドラグニティ‐ファランクス》を解除し特殊召喚!」
 鳥の鎧で身を固めた戦士との横に、褪せた金色の鎧と青い肉体の小竜が並ぶ。
 初手は、この手札で負ける気のしないほど自信の持てる手札だった。そこから繰り出される黄金の流れはこれまでいくつものデュエルで彼を支えてきたものだった。
 しかし気になるのは奇術師の一枚の伏せカード。今まで奇術師とは何度も闘ったが、その中のどのデュエルでも彼のトラップカードに痛い目を見せられて来た。多彩なトラップカードと奇抜な戦略から付いた『奇術師』の名は伊達ではない。
 奇術師の立つ建物へと飛び移り、互いに向かい立つ。
 「どうした、破壊されたのは《強制脱出装置》だ。まだ召喚を警戒するとは、臆病風にでも吹かれたか?」
 挑発的な態度で怒りがこみ上げるが、デュエルには邪魔なだけと割り切ってすぐに頭を冷やす。怒りにまかせたデュエルでの失敗はもう二度としないと決意している。
 「《ドラグニティ‐ファランクス》と《ドラグニティ‐ドゥクス》でシンクロ召喚、灼銅の竜騎士《ドラグニティナイト‐ガジャルグ》」
 一瞬の赤い閃光。その後、星屑使いの場に現れたのは一体のモンスター。チューナーと呼ばれる特殊なモンスターとそれ以外のモンスターで行う、シンクロと呼ばれる特殊な召喚方法だ。
 「召喚時はなんにもねーよ、続けなー」
 深紅の鎧に紺碧の肉体と翼を持つ竜の上で同色の鳥の戦士が槍を構える。奇術師はそれをしっかりと確認し、続きを促した。
 「《ドラグニティナイト‐ガジャルグ》の効果で《霞の谷の幼怪鳥》を手札に加え、そのまま墓地へ。そしてこのカードは手札から墓地へ送られた時、特殊召喚出来る。《霞の谷の幼怪鳥》特殊召喚!」
再び奇術師が走り出し、それを見て星屑使いも後を追う。建物から建物へと飛び、モンスターたちも持ち主に沿って飛んで行く。
 「行くぞ!《霞の谷の幼怪鳥》と《ドラグニティナイト‐ガジャルグ》でシンクロ召喚!」
 声と共に光の柱が二人を飲みこむ。柱から光の粒子が零れ、二人の足下の市街に雪のように降り注ぐ。
走り続ける二人が光の柱から駆け出でると、星屑使いを追って一匹の龍が現れる。
 「現れろ我が魂…閃洸の星龍、《スターダスト・ドラゴン》!!」
 鎧のような浅葱色の鱗に純白の肉体と翼を持つ龍が現れる。その星龍が翼をはためかせると、地球から見る彗星のごとくゆっくりとした速度で光の粒子が当たりに蒔かれた。
 「さあ、この一枚は何かなー?」
 「知ったことか!《スターダスト・ドラゴン》で《悪シノビ》を攻撃!」
 星龍の口から光の柱が忍者を狙って迸る。
 「トラップ《万能地雷グレイモヤ》発動!攻撃モンスターを破壊!さあ、効果を使いな!」
 光の柱が忍者に触れる直前で爆発し、柱を伝うように爆発が星龍の口へと向かう。
 「こざかしい…。《スターダスト・ドラゴン》の効果、自身をリリースして破壊効果を無効にし、破壊する!」
 星龍が光に包まれて消えると共に、爆発も煙のように消滅する。
 「さーすが、実体化したドラゴンは迫力あるな」
 「やつのカードは破壊した、しかし今の爆発は…」
 「さて、《悪シノビ》の効果、攻撃対象となった場合、オレは一枚ドローする」
 忍者が懐から巻物を出すと、それを奇術師のディスクに投げる。巻物がディスクに吸い込まれるように消えると、デッキの一番上の一枚がデッキから少しはみ出で来た。奇術師はそれを引き抜いて手札に加える。
 「オレはカードを二枚伏せ、ターンエンド。そして《スターダスト・ドラゴン》の効果!」
 二枚のカードが足下に伏せられた。その後、光の粒子がディスクから溢れ出すと、先ほどの星龍の形となった。
 「《スターダスト・ドラゴン》復活!」
 「いやー、流石。能力者のデュエルはスリル満点だな」
 「駄弁りは不要だ!デュエルを続けろ、俺の能力など、前回のデュエルで既に周知の事実だ」
 茶化す奇術師に怒りの視線を向ける。
 「『特殊召喚したレベル7以上のドラゴンの実体化』…いやー、凄まじい能力だ」
 「くどいぞ!」
 「まあまあ、そう怒らず。………やっと来たか」
 「何?」
 奇術師が走る速度を上げ、それに合わせてペースを上げる。
 すると、前から何者かがすぐ横を同じくらいのスピードで通り過ぎた。
 「《A・O・J クラウソラス》で攻撃」
 ふと聞こえた声を合図にして、機械の巨怪鳥が隣をすれ違う。その背には忘れられない顔の男がいた。その男を思い出し、星屑使いに戦慄が蘇る。自然と足は止まり、胸の奥から凄まじい量の感情が勢いよくこみ上げる。
 雲が月にかかり、星屑使いの顔に影をかけた。
 「トラップ《万能地雷グレイモヤ》発動!攻撃モンスターを破壊!」
 男は機械鳥の背に亀裂が入るのを見てすぐさま飛び降りる。飛び降りた男の背で機械鳥が轟音と共に爆発し、燃えた破片が市街地へと落ちて行く。
 「なんだと!?」
 男は着地するや否や、目の前で対峙している影を睨む。
 「貴様、この爆発…!」
 雲が切れ、影の顔が光にさらされる。
 「ロクク!!!」
 「チッ!そういうことか!」
 ロククと呼ばれた男が咄嗟に振り向く。星屑使いの右拳が固く握られ目の前まで迫っていた。ロククは自分の右手を自分の顔と迫る右拳の間に持って行き、拳を受け止める。
 「スターダスト!!」
 呼びかけに応じて星龍がロククに襲いかかる。星龍が鋭い爪を持つ左手を振り下ろす。
 「チッ!来い、トリッキー!!」
 マジシャンのような出で立ちのモンスターが、ロククを守るようにして両手を伸ばす。
 マジシャンが星龍の左手を受け止めると、凄まじい威力の衝撃が二人の体を突き抜けた。しかし少しづつマジシャンの両手が押さえつけられていく。
 「やはり、実体化させたモンスターとじゃ差があるか」
 「ロクク!今ここで倒す!」
 先ほどまでとは打って変わり、星屑使いは感情を爆発させていた。
 「それより、俺の後ろを見てみろよ」
 ロククがディスクをつけた左手で親指を立て、後ろを指す。決して冷静さを失ってはいない星屑使いが視線を移すと、そこにはさっきまで自分と闘っていたはずの奇術師の姿があった。
 「どういうことだ!?」
 「どうやら盛大に水を指してくれるらしい。とりあえず、まずはこの手を引いてもらおうか!」
 ロククが星屑使いの腹に力強く蹴りを入れる。
 「ぐっ」
 痛みに呻きながら後に吹っ飛び転がる。直ぐに起き上がるが、腹部を圧迫された苦しさに耐える間は喋ることは出来なさそうだ。星屑使いがロククを鋭く睨む。
 「説明はあるんだろうなぁ、ペテン師」
 「おい、デュエルしろよ。…って、まさかペテン師とはオレのことか?そりゃ随分と洒落た呼び方じゃねーか死体マニア様」
 「どうやらお前は、俺の怒りを買うのが目的らしいな」
 「ったく、説明?簡単な話じゃねーか」
 こちらの奇術師も、星屑使いと対峙していた奇術師同様に不敵に笑う。
 「『屍の主』ロククと『星屑使い』が互いの命を賭けて最後の決戦をするって聞いて、全力で水を差しに来たって訳だよ」
 喋り方とは裏腹に、どす黒い殺気のようなものを、星屑使いとロククは感じ取った。
 「ふざけるな!」
 何とか声が出るようになった星屑使いが声を上げる。
 「これは、俺達の戦いだ。誰にも邪魔はさせん!…それに、これはどういうことだ!答えろ、『奇術師』!」
 「どういうこと、ってーのは?」
 質問と同時に、敵意をむき出しにして、ロククと対峙していた奇術師を睨む二人の間を『星屑使いと対峙していたはずの奇術師』が通り過ぎた。
 奇術師が、同じ場所に二人立っていた。
 「俺達を邪魔する為にしちゃ、随分と凝ったコントセットだなァ、ペテン師!」
 ロククが二人の奇術師に向かって言う。
 「さしずめ、お前の能力で作りだした…トークンといったところかァ?」
 「ご名答だ、死体マニア様。そこで問題…オレの能力は何だろうな?」
 「トラップ…」
 星屑使いが呟く。
 「ん?」
 「ロクク、貴様の『能力で作りだした…トークン』という一言でピンと来た」
 ゆっくりと奇術師に向かって歩きながら、星屑使いが話す。
 「お前の能力は『トラップの効果の実体化』だ」
 「よく分かったな、星屑使い。一体いつから?」
 ロククと対峙した奇術師が『まいった』というポーズを取る。
 「フン、最初は今回登場したお前の脚力の異常さだ。あれはどう見ても人間技ではない」
 「ああー、あれは確かに自分でもやり過ぎたと思う」
 「次は《万能地雷グレイモヤ》だ。あの爆発は、ロククに撃ったのも俺に使ったのも本物の爆発だった」
 「正解だ。流石に今回は、オレも能力無しじゃまともに戦えないと思ってね」
その言葉を皮切りに、星屑使いと闘っていた奇術師は形を崩し、銀色の不透明な液体になるとそのまま足下に吸い込まれるように消えた。
 「《クローン複製》、…そう。星屑使い、お前の推理どうりだ」
 《クローン複製》のカードを見せ、得意げに奇術師が笑う。
 「ペテン師ィ、お前も俺達と同じだったとはな。今までは力を隠して闘っていたという訳か」
 「死体マニア様、あんただってもう能力隠す気無いくせに良く言うなあ」
指を指されてロククの表情が柔らかくなる。
 「まあなァ。今日が俺達、人工サイコデュエリストの失敗作『トラッシュ』の最終決戦なんだ、勿体ぶっちゃ楽しめないだろおう?」
 「死体マニア様、あんたの能力は『墓地から蘇生したモンスターの実体化』、…そーだろ?」
 「イャ、ハズレだ。正確には…」
 「正確には、『墓地から蘇生したモンスターと、それを利用したモンスターの実体化』だ」
 星屑使いの発言で、場の空気が変わる。
 「確かにそうだァ。よく気付いたな」
 「フン、貴様と何度闘ったと思っているんだ」
 幾度となく闘いを重ねた二人は、互いのデッキはおろか能力、現在の戦術の全てを現状で感じ合っていた。それは、奇術師も同じ。
 「さて、そろそろデュエルの再会といこうぜェ?」
 ロククが再び手札を構える。
 「ひっこんでいろ奇術師!これは俺達二人の闘い。邪魔が入ってはこれまでの意味が無い!」
 「そーそー、邪魔にならなきゃオレが来た意味が無いからな」
 奇術師が今までで一番、薄気味の悪い笑みを見せる。
 「オィオィ、まさかこんなペテン師のちっぽけな邪魔で俺達の決着に影響が出ると?ビビってんのか?」
 「ふざけるな!…良いだろう、三つ巴のバトルロワイヤルというわけか」
 星屑使いがディスク付きの左手で奇術師を指さす。
 「ペテン師、俺はカードを一枚伏せてエンドォ!貴様のターンだぁ。まずは自ら広げた大風呂敷でどんな闘いをするのか見せてもらおうかァ!」
 「そうこなくっちゃな、アンタらの後攻一ターン目が終了した時点でのオレのフィールドはクローンとも同じ。ここから進める!」
 奇術師がディスクを構えると忍者が背後に現れた。
 「ドロー!!オレは…」
 「この瞬間、トラップ《バスター・モード》!!」
 星屑使いのカードに星龍が吸い込まれ、眩い光が視界を奪う。
 「進化せよ!《スターダスト・ドラゴン/バスター》!!!」
 咆哮が衝撃波を生み、ロククと奇術師が身構える。光が収まると、琉璃紺の鎧に身を包んだ星龍の姿があった。羽ばたく翼からは眩い光が流星のように辺りにちりばめられる。
 「初手から揃えるとは、流石『星屑使い』の異名を取るだけのことはあるなァ」
 「奇術師!この星龍の前で、動けるのなら好きにするがいい!」
 「このターンは無理だわ、カードを二枚伏せてエンド」
 あまりにあっさりと奇術師はターンを終了した。星龍の効果無効の効果は強力だが全く動けなかったというのは今回が初めてだ。
 …何かある。
 そう思わざるを得なかった。
 「先は貰うぞ?ドロォー…《ジェネクス・コントローラー》召喚!さらに手札から《思い出のブランコ》発動、蘇れ《A・O・J クラウソラス》!」
 「死体マニア様も、よく動くねー」
 「《ジェネクス・コントローラー》と《A・O・J クラウソラス》でシンクロ召喚!現れろォ、鉄の鉄道兵器《レアル・ジェネクス・クロキシアン》!!!」
 漆黒の機関車を象った機械巨兵がロククの背に、足下からそびえ立つように現れる。
 「ロクク、何のつもりだ?」
 ロククの繰り出した《レアル・ジェネクス・クロキシアン》の効果は、相手フィールドで一番レベルの高いモンスターのコントロールを奪う効果。そして現状で一番レベルの高いモンスターは《スターダスト・ドラゴン/バスター》だ。しかし星龍が対象となった場合、効果によるカウンターは免れないだろう。星龍の効果は『効果の発動を無効にし破壊する』効果。コントロールを奪おうとすればたちまち破壊されてしまうだろう。
そんなことはロククも判っているはずだ。しかし鉄道兵器を場に出したということは何か策があるということに違いない。
 「俺はァ、鉄道兵器の効果発動!」
 …馬鹿な!みすみす返り討ちに会いに来ただと!?
 星屑使いは冷静な表情の下で、驚きを隠せずにはいられなかった。ロククに策があることは判った。そしてこの状況、俺達二人を相手に奇術師は二枚の伏せで迎え撃とうとしている。あの自信、二枚で迎え撃てるという自信からあの二枚は凶悪であることは明確だ。そして奇術師の場には《悪シノビ》。あのモンスターは攻撃をされると、例えその攻撃を受けなくてもコントローラーに一枚のドローを与えると言うカード。まともに突っ込めば伏せカードに妨害され、奇術師は一枚ドローと確実にこっちがディスアドバンテージを被るだろう。それを考慮するとロククもまずはあの伏せか《悪シノビ》を消去したいはず。
 しかし、これがロククの戦略だとしてもみすみす乗って良いものだろうか。もし戦略も何も無ければ攻撃力3000ものモンスターをみすみすロククに渡してしまうことになる。ロククとの最終決戦をしに来たのにこれでいいはずはない。それにこれから攻撃に転じようとしているロククの場は奇術師のトラップの嵐に会うと言っていい。そんなところに自らの切り札を譲るわけにはいかない。
 何より、今までに無い状況過ぎて理解が追い付かない。
 「星屑使い、どうするゥ?……チェーンはあるか?」
 「…チェーンは」
 こちらを見据えるロククの瞳を見る。
 「チェーンはない!」
 「何?気でも狂ったワケ??」
 奇術師があっけに取られる。
 「良く言った!俺はァ、自身の鉄道兵器にチェーンしてマジック発動ゥ、《サイクロン》!対象はァ、《龍の渓谷》!!」
 その瞬間、ロククの真意を理解する。
 「《スターダスト・ドラゴン/バスター》の効果発動!破壊効果を無効にして破壊!」
 星龍とロククの罠が光に包まれて消える。
 「一体何がしたかったんだよ」
 奇術師が下手なマジックでも見たようにつまらなさそうな顔をする。
 「おいおいペテン師、《レアル・ジェネクス・クロキシアン》は対象を取らない効果なんだぜェ?」
 「まさか!」
 「そう、この瞬間ロククから見て『相手フィールドで一番レベルの高いモンスター』はレベル2の《悪シノビ》!…ロクク、俺の星龍を眠らせたんだ。失敗は許さんぞ!」
 「効果によりィ、《悪シノビ》のコントロールを貰うぜェ」
 「くっ!」
 戦略は瓦解した。全ての戦略の起点が《悪シノビ》である奇術師のデッキでこれ以上は無いと言っていいほど痛烈なダメージを与えたに違いない。
 「ロクク、貴様との協力…次は無いぞ」
 「俺も、二度とご免だなァ…。…アタック!《悪シノビ》、《The トリッキー》で攻撃!!」
完璧な攻撃だった。二体がやられたとしても一体は通す。二体が通れば鉄道兵器での攻撃はしない。そして次は星屑使いのターン。相手の出方を見ながら戦略は完全に封じ、フィールドを空けることで次に繋ぐ良質な一ターンだった。
 奇術師が、不敵に笑うまでは。
 「貴様のライフ、大きく削らせてもらおゥ!」
 「それはどうかな!」
 奇術師がディスクに手を置いた
 『…まさか、二人同時にかかってくれるとはな』
 しっかりと、その言葉が2人の耳に届く
 「何!?」
 「…!」
 
 「トラップカード・オープン」

Materialize.69 『Cloudy end』
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